【衝撃】勝率51%で敗北宣言?なぜ?〈広島アルミ杯本戦〉

皆様、こんにちは。

2020年11月22日、23日に行われた、第15回広島アルミ杯本戦トーナメントに勝ち残り、広島県へ行ってきました。その時の様子を簡単にレポートします。


タイトル戦の記録係として地方へ何回か行かせていただきましたが、対局者として地方に行くのは初めてで大変楽しみにしていました。

本戦に出場しているのは、予選を勝ち抜いた16人。その中には、仲邑菫初段(11歳)もいます。

4連勝すると優勝です(賞金300万円)

(持ち時間はNHK杯方式で、1手30秒,1分の考慮時間10回です。勝つと1日2局)


【目次】

前夜祭の様子

本戦1回戦の振り返り(vs 大西竜平七段

AI勝率51%で投了?何が起きた!?

優勝したのは藤沢女流三冠!男女混合で女性初!


本戦ともなると、前夜祭が開かれます。そこでは、関係者の方々とテーブルを囲み、高級なコース料理を食べながら、対戦相手を決める抽選会が行われます。

対局前日に抽選するというのは非常に珍しい方式です。

基本的に、対戦相手の研究を事前に済ましてから対局に挑みますが、今回は、前夜祭終了後にやるしかありません。

前夜祭で対戦相手を決める抽選するときの様子〈写真1〉(ボール持ってるのが西岡

※今回はコロナの影響もあり、フェイスシールドをしながらの抽選。テーブルを共にしていますが、両隣にシールドが張られています。

抽選の結果〈写真2〉(赤が女性棋士青が私です

厳正なる抽選の結果、私の相手は大西竜平七段に決まりました。

事前に行われた、優勝予想ランキングで、圧倒的1位だった大西竜平七段と。

その相手と対戦できるということで、余計に気合が入りました。(ということにしておきます)


ここで本戦トーナメント表を送った時の反応(LINE)を一部紹介!!

伊田篤史王冠「大したことないからけちょんけちょんにしてやりな!笑」

六浦雄太七段「僕に勝てるなら(予選決勝で倒したから)大丈夫です笑」

田中伸幸四段(立命館大学先輩)「まあ優勝だな!」

等々、激励の言葉を頂きました(笑)


そして、大竹優四段は、大西竜平対策を手伝ってくれました。

優しい先輩方ばかりで涙がでます。

そして12時頃就寝。明日への対局へ挑みました。

広島アルミ杯本戦トーナメント1回戦の様子(手前左が西岡二段、手前右が大西七段)

では、対局を少し振り返っていきたいと思います。


私の黒番です。

初となる大舞台での対局・・・。対局が始まってからもしばらく緊張していました。

今大会は、NHK方式です。その為、基本30秒以内に打たねばなりません。緊張している間にも局面は進み・・・。

相手の大西竜平七段は、早稲田大学二回生(20)。数少ない大学生プロ棋士です。

彼の棋風は、極めて独創的で変わった手を好みます。そして相手を惑わせ、間違えさせること得意です。それに加え、形勢判断が明るく、読みが正確なのが特徴です。

(局面図1)黒△に打った局面

序盤から、大西七段特徴出た手が現れます。それが白1のオオゲイマ(?)。意図は、よく分かりませんが、彼らしい手です。もう慣れているので特に驚かず、むしろ1かAに打ってくるだろうと予想していたので対応手は決めていました。


ここだけで終わる大西七段ではなく・・・

(局面図2)黒△に打った局面

下辺は落ち着き、そろそろ左上Aのシマリか何かかなと思っていたその時、相手の石が右下にやってきました。それが白1の様子見です。

一瞬「何してくれとんねん」思いましたが、打たれてみると受け方がなかなか悩ましい。黒Bに受けようかと思いましたが、少し利かされているので気合が悪いなと思い、思わず1回考慮時間を使用しました。

なんと、この白1ですが、AIと完全一致しており、普段からAIを使いこなし研究している大西七段ならではの手だなと、局後関心しました。


大西節はまだまだ続きます

(局面図3)黒△に打った局面

黒は、白の態度を様子見して、今後の展開を決めようとしていたが、何とここで白1と手抜き

大半の棋士は、AかBの二択で悩み、僕もそれを予想していましたが、まさかの手抜き!!度肝を抜かれました。


中盤になっても大西節炸裂!!

(局面図4)左下二段バネした局面で黒△が最終手。

ここで、白の放った一手がカケ!

黒は、左下の白の受け方の様子見をしたのですが、それを嫌い、逆に様子見返しをされてしまいました。

この局面では、左下を何か対応するのが一般的ですが、この発想には驚きです。

このように、序盤から中盤にかけて大西節が炸裂しました。

好き放題やられて、押されているようにも見えますが、形勢は互角。しかし、中盤にかけて大西七段の石運びが上手く形勢が傾きますが、終盤に、大西七段が緩んだ隙を見逃さず、形勢は再び互角に。


そこで最終局面。

(局面図5)白198手目△に打った局面

ここで、僕が投了(敗北を宣言)した。もう殆ど打つところがなく、2目半ほど地合が足りないと思っていたからだ。

しかし・・・AI(※1)によると、この局面での黒の勝率は51%あったというのだ。つまり半目勝負である。


終局直後、伊田篤史王冠からLINEが来ていた。

「うおぉぉおいっΣ(-᷅_-᷄๑)投げんの早くないっすか?笑( ;´Д`)」

え・・・?

まさかの大舞台で計算ミス・・・?

僕は唖然とした。


実際のところ、見た目の地は白の方がやや多いのだが、白の方がやや薄く黒に寄りつきの余地があったのだ。


こうして、僕の初めての大舞台である、広島アルミ杯本戦トーナメントを自らの手で、終止符を打ってしまったのだった。

この大会に向け、強い先輩方にほぼ毎日教えてもらっていたのだが、結果が出なかったこと、加えて逆転の余地があるのにも関わらず投了してしまったことへ反省の思いでいっぱいだ。

しかし、この大舞台を経験できた価値は相当なもので、成長できたと感じている。今後、この経験を活かして頑張っていきたい。


※1)6目半設定のLeelaZero


〈写真3〉決勝戦、孫喆七段(左)ー藤沢里菜女流三冠(右)

私は、決勝戦の記録係を担当した。(写真奥の白マスク)

藤沢女流三冠は、終始冷静に打たれており、大舞台の経験慣れをしているように近くで見ていて感じた。

対して、孫七段も怒涛の粘りを見せ、勝負に対する負けん気の強さを感じた。


間近で見ていて、僕に足りないのは「粘り」だなと記録しながら、そう感じたのであった。

その粘りをも物ともせず冷静に対応する藤沢女流三冠の堂々たる貫禄。

私が、結果を残すには何もかもが足りなかったんだなと痛感しました。


結果、藤沢女流三冠の半目勝ち

女性初となる、男女混合トーナメント公式戦初優勝を飾ったのであった。



〈おまけ〉仲邑菫初段と記念写真(笑)

また来年、お互い広島に戻ってこれるように頑張ろうね。

囲碁プロ棋士【西岡正織】official site

●にしおか まさお。 ○日本棋院中部総本部所属 ●平成29年入段、令和4年三段 ○令和2年立命館大学卒 ●和歌山県出身 ○平成10年3月26日生まれ